GUEST INFORMATION

天沼 聰

株式会社エアークローゼット

https://www.air-closet.com/

株式会社エアークローゼット CEO 天沼 聰

1979年生まれ、千葉県出身。
高校時代をアイルランドで過ごし、英ロンドン大学コンピューター情報システム学科卒。
2003年アビームコンサルティングに入社し、IT・戦略系のコンサルタントとして約9年間従事。
2011年に楽天株式会社に転職し、UI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務めた後、「ワクワクが空気のようにあたり
まえになる世界へ」をビジョンに、2014年7月に株式会社エアークローゼットを設立。
日本で初めての普段着に特化した月額制ファッションレンタルサービス『airCloset』を立ち上げ、その後もパーソナルスタイリン
グを提供するサービスを中心に複数の事業を展開。
一般社団法人日本パーソナルスタイリング振興協会 理事
一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会 初代理事
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 理事を務める。

日本初であり国内最大級の女性向けの普段着に特化した提案型ファッションサービス「airCloset」を運営する株式会社エアークローゼットのCEO天沼氏をお迎えし創業までファッション業界に全く縁がなかった天沼氏がどういった経緯と思いでサービス立ち上げたのか、サービスの背景や裏側、今後の展望やビジョン、自身の経験談などを詳しく聞いた。

1:時間の価値とは

株式会社エアークローゼットが展開する「airCloset」は、月額制のサブスクリプションモデルで、同社に所属するスタイリストが数十万点あるアイテムの中からお客様の好みやライフスタイルに合わせて3~5点ほどのコーディネートを行い、自宅に郵送する。決まったセットで送ることは1度もなく完全パーソナライズされた非常に面白いサービスになっている。更に返却時に利用者が実際に着用した感想を登録することができ、この色は好みではなかった、次はこういった雰囲気が良いなどの要望を細かく聞くことでそれらのフィードバックを基に、より適切なコーディネートを提供することができる仕組みとなっている。例えば、体のこの部分をもう少し隠したいなどの女性ならではの悩み、デートに行く場所に見合ったコーディネート、コロナ禍ではオンラインミーティング用にトップスだけのレンタル要望や、外出ができないので気分が元気になるようなカラーリングなど想像では成し得ない女性ならではの観点や視点などの生の声はとても参考になったそうだ。こういったサービスを始めた経緯を聞くと、10年前に仲間を誘い創業した当時はファッションをやろうとは思っていなかったそうだ。何をしようかと話し合った時にライフスタイルが豊かになるものをつくろうと協議をしたが、ではライフスタイルはどうしたら豊かになるか?と行き詰まったこともあったが「すべての人が持っているが使い方や感じ方によって不平等になるのが時間の価値ではないか」と、時間の価値を高められる会社を作ろうと決心する。そして初めに協議したワードでもあるライフスタイルというキーワードを元に、衣食住の中で人の心を1番ワクワクさせ1番近くにずっとあり心を動かしやすいものは何か、それはファッションだと閃き、では一層それを感じやすいのは女性ではないかと辿り着く。もちろん現代では男性も身だしなみに気を使いファッションへの関心が昔より格段に上がってはいるが女性は時間の使い方が朝から晩まで、もとい睡眠時間までと言っても大袈裟ではないほどに美容やメイクを含めたファッションに対しての向き合い方が桁違いではないだろうか。社会人になりキャリアアップと共にファッション誌を見る時間すらなくなり、マタニティ時期や子育て期は自分の時間よりも子供の時間を優先するなどライフステージの切り替えで自分に対しての時間の優先順位が下がるのは仕方がないと、時間が許せばウィンドーショッピングやネットショッピングを楽しみたいがその時間さえ贅沢であると知らず知らずの内に我慢や諦めをしてしまっている人も多いと思う。そういった“我慢”を生活リズムを変えなくとも軽減でき、自分のセンスだけではなく他からのセンスで新しい自分に出会えるチャンスがパーソナルスタイリングには魅力があるのではと始めた経緯を聞きファッション経験のない3人の男性が、女性すら目を逸らし考えないように諦めていたこと全てに寄り添い考え察してくれていたという事に心から称賛をし感動した。

2:大量消費に打ち勝つレンタルサービス

ここ近年、社会問題となりファッション業界の当事者も頭を抱える大量生産に比例する大量消費と大量廃棄はSDGsという言葉が浸透したきっかけと言っても過言ではない。そう言ったワーストに挙げられてしまう製造と消費、需要と供給の難しい相互問題でもあり社会現象にもなる現状に目を向け使い捨てではなく、本来の長く着て欲しい楽しんで欲しいという生産者やデザイナーたちの思いを尊重し良い出会いを作り長く大切にされるような洋服との出会い方が作れたらなと考えレンタルということに行き着く。とは言えレンタルサービスをした時にどうぞ自由に選んでくだいとサービスを始めたとしても、普段着を選ぶ時間がない人がコーディネートを考える時間があるのか、更に返却期限を設け、クリーニング後の返却も考えたがそこで時間を割くことは元も子もないと気づく。デートに行きたいのにクリーニング店の営業時間を気にしなければいけない、延滞料金が発生したら返却時間を気にしてしまう、時間の価値を高めたいと始めたサービスが色々と圧迫してしまうのではないかとエアークローゼット社がクリーニングやメンテナンスの整備を請け負い月額制内で収め負担してくれているのも特徴的だ。それもひとえにレンタルはあくまでも手段であり色々な洋服を試しこれが似合う、これは違うなと新しい自分に出会って欲しいという思いが込められているからだ。そしてトキメク1着に出会った時には購入もできクローゼットに迎えることもできる女性心をくすぐりありがたいサービスも行っている。

3:痒いところに手が届くサービス内容

現在はサブスクリプションの月額会員数は3万5000人、総登録者は120万人強を誇るが、立ち上げた10年前にはファッションのレンタルサービス及び普段着のレンタルサービスは日本にはなく、ファッションレンタル×パーソナルスタイリングのサービスを初めて行ったのもエアークロゼット社である。現在は会員種別も2つありレンタルサービスを受ける月額会員登録とレンタルアイテムからアウトレットのような形でセール販売しているアイテムを購入できる無料会員があるそうだ。2017年頃から300ブランド程と取引があるがその数はあまり変わっていなくブランド数というよりはアイテム数に拘っているそうだがその理由として質の高い洋服のバリエーションを何十万着と揃えることで様々なニーズに応えることができパーソナライズできるからだと考えている。サービスを利用する人はもちろんのこと全国各地に利用者がいることで風土や気候、シチュエーションも変わってくる、更には天気予報によってもスタイリングやコーディネートも変わってくるがそういった情報にも対応できるような仕組み作りもしている。通常、シーズンは4つだがエアークロゼット社は6シーズンに分けて展開をしシーズンごとに数万着の新作を取り扱うそうだがどこにどういった状態で保管をしているのかを尋ねると驚くことに一点一点の状態を全て人の目によって最終検品をしてるそうだ。クリーニング後に取れかかったボタン、食べこぼしなどのシミがあれば専用ブースなどのメンテナンスの体制も整備している。また、RFIDという非接触タグを導入し読み込むとアイテムのIDが管理できる独自の物流システムを開発し、通常の出荷して完了の流れではなくエアークローゼット社レンタルゆえの一方通行ではなく帰ってくるサイクルされる物流=好循環システムと名付けた倉庫のシステムを導入している。このシステムもゼロから自社で即時に開発をせざるを得ない状況だったと話すが循環させ管理するの事は相当な企業努力が伺え、ファッション業界を飛び越えまさにITの世界である。それには天沼氏のバッククランドも関係しているが、ITの仕組み作り、ITの戦略系コンサルファームに携わりインターネットを活用したビジネスを学んできた。そういったことが今に活かされファッション業界と縁遠かったデジタルとファッションを逆に融合できたのかもしれない。ITはあくまでもツールでありファッションの原点であり大事なことは、こだわりを持って作ったアイテムを長く着てもらいずっと愛してもらうことことだと話し、本物を作り提供してくださっているブランドやメーカーにサービスを利用している方々は出会いたいと思っているはずだから私たちが出会いの仕組みを作っていると続けてくれた。