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渡部 郁子

温泉ソムリエ / アウトドアナビゲーター

温泉ソムリエ / アウトドアナビゲーター
https://miraihouseworks.com/

アウトドアナビゲーター/温泉ソムリエ。学習院大学法学部卒。旅行会社、局アナを経てフリーに。JFNなどでアウトドア番組を担当し、All Aboutガイドとして執筆。山と温泉、音楽の魅力を親子で楽しむスタイルを提案。著書『東京温泉ナビ』(2025)刊。株式会社みらいハウスワークス代表。温泉療養士資格を持ち、渋谷のラジオでニュース番組も担当。取材・講演、メディア出演多数。東京都在住。自然の楽しみ方発信。

学習院大学法学部政治学科を卒業後に旅行会社(北米担当)勤務を経て、ラジオ業界に転職。複数のラジオ局で局アナウンサーや番組制作を経験し、現在はwebや雑誌など様々な、メディアでアウトドアと温泉の情報を発信している。好きなこと、楽しいこと、ポジティブなものにスポットをあて、心を豊かに、人生を豊かにする情報の取材・発信に取り組む彼女の原動力とは。

1:思いっきり楽しむ

アウトドアは自然の中で楽しむものであり、自然そのものは変わらないのに対しブームは日々、刹那的に変動している。今は子供への安全面は勿論、家族で楽しめる工夫が施されているが渡部氏が活動を始めた当初の20年前は音楽フェスに子供を連れていくことが可哀想と言われていた時代だった。そこで、憶測やイメージで危険だと思われるのであれば自ら楽しんでいる実体験を発信することで行きたいと思ってくれる人が増えるのではないかと活動を開始した。更に、山梨の放送局でナウンサーをしている時に山や温泉を巡る機会があり興味を持ったことから温泉ソムリエの資格を取り温泉研究家としても活動しているのだが、温泉が実際にどういった効果があるのか、体にどう影響を与えるかに加え、温泉でどういった感動を得られるかなどを全国各地、世界中の温泉を対象に研究している。温泉に携わるきっかけもお子さんと楽しめるという点がポイントとなっているそうだが何時間でも遊びながら楽しめる子もいれば、顔にお湯がかかったり長く湯船に浸かれないなど、お風呂自体が苦手な子も居る。そういった子たちにもっといっぱい楽しみ方があるよと、温度を低くしたりプールのように泳げる広さを確保したりと子供たちが遊びながら入れるような工夫を凝らした温泉もあれば、大人も年齢によって温度や性質効能の好みも変わる、大人と子供、大人と大人、行く人と一緒に楽しめるように温泉を選ぶ選択肢が増えたら楽しみ方も広がる、その手助けができるようにと活動をしているそうだ。では、実際に自分がどういった温泉に入りたいかをイメージしていただきたい。せっかくだから遠出をして景色の良い自然に囲まれたところに行くか、もしくは近場でサクッと行けるような手軽なところが良いか、一人でゆっくりと内風呂を楽しみたいか、大浴場の開放的なところが良いか、食事も重点を置きたいかなどをしっかりとイメージする事。次に泉質だが主に単純温泉、塩化物泉、二酸化炭素泉、硫酸塩泉、炭酸水素塩泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉、含よう素泉の10種類に分類され、その成分の違いによってお湯触りが変わってくるそうだ。その何通りもある中から好みを選ぶと良いそうだが正直、専門的すぎて何のこっちゃ分からない人がほとんであると思う。例えば、アルカリ性単純温泉は刺激が少なく、肌に優しいのが特徴で、子供からお年寄りまで安心して入浴でき、お湯がぬるっとした感触なのだがこれは肌の余分な脂や汚れを溶かしている証拠でクレンジング力が高く美肌効果が期待できる。また、硫酸塩泉は肌の保湿力を高めてくれるので温泉に入った次の日に肌がプリプリになっている経験をしたことがある人はこの泉質のお湯に知らず知らず入っているかもしれない。また血行促進、高血圧予防、鎮静作用など様々な効果が期待できるとされ特に三大美肌泉質の一つとして知られているそうだ。どういった効果を得られたいかで泉質を選ぶのも楽しいと思うので是非行く前に色々と調べてみてほしい。そして何より大切なのは楽しむということ。プラシーボ効果という薬効成分を含まない偽薬(プラセボ)を服用しても、患者が薬だと信じ込むことで、症状が改善したり、体調が良くなったりするように感じてしまう現象で科学的にも証明をされているそうなので温泉に入って元気になったぞと思うことが大事だと教えてくれた。また単純温泉は優しい温泉とも言われておりうつ症状にも効果がありメンタル面にも効果があるのでゆっくりと使っても体が疲れないので日々の生活に疲れている人はお勧めとのことだ。

2:海外の温泉事情

関東近郊で人気の温泉地といえばやはり箱根は不動であるが、東の草津、西の別府と呼ばれるこの2つの温泉地も外せない。肌をプルプルにしてくれる硫酸塩泉が多い箱根に対し、草津は泉質が強く、効果が高いが、肌が弱い人には刺激が強い場合もあるので注意が必要とのことなので事前に泉質を調べてから行っていただきたい。国内にも温泉地は沢山あるが海外はどうなのかを質問するとここ最近行ったアイスランドの温泉事情を教えてくれた。世界一の広さがありちょっとした湖だと例えてくれたが温度も38~42度と低めで日本人にはぬるめでありながらも海外の人には熱いと感じるなど温度の感じ方もそれぞれで面白い。そして子供は足がつかないので浮き輪でぷかぷかと浮かんでいる横で大人はビールを飲みおつまみを楽しむなど日本とはまた違ったリラックス法で「みんなが楽しむ場所」として認知されている点も理想的だと話してくれた。またドイツヨーロッパでも人気でアメリカ、台湾、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各地に温泉があるが水着を着て入ることが大前提で、裸で温泉に入る日本はとても珍しいそうだ。海外からも温泉を目的としてくる観光客も多く温泉地には行くが「入れなかった」と日本独特の裸で入る文化に抵抗がある人も多く習慣や文化によって楽しみ方が変わる点はとても興味深いと思った。

3:講演と著書

渡部氏は温泉地で泉質などの講演会やセミナーを行うことも多いがその時は必ず着物を着て日本酒とセットで温泉を紹介するそうだ。日本文化として国内の人は勿論、海外の方にもお伝えできるようにしっかり学び来てくださったお客様にきちんとお伝えしませんか?と講座を開いている。この講座は温泉や観光地に関わっている業界の人向けだが、オンラインで「温泉ナビゲーター養成講座」という受講するとナビゲーターとしての資格を認定されるという講座を開設している。「温泉が好き」「温泉について学んでみたい」という方ならどなたでも受講でき、温泉分析書の読み解きかたを学び、温泉の泉質と特徴を理解できるようになるそうだ。また、渡部氏の著書「東京温泉ナビ」には東京の温泉ガイドブックとして楽しめる内容でありながら、温泉施設の情報に加えて、温泉ソムリエの視点から泉質名、泉質の特徴などを詳しく解説している専門書として、温泉知識を得る学びの本としてとても充実した内容となっているので是非、手に取って温泉に行った気分を味わっていただきたい。

後編は東京の温泉について、温泉の成分、温泉業界の現状のなどさらに詳しく話を聞いていきたいと思う。