GUEST INFORMATION

葦沢 恒

GUM株式会社 代表取締役

GUM株式会社
https://gum7.com/pc/welcome.html

<ゲストプロフィール>
1982年生まれ。大阪府出身。 前進座俳優養成所を卒業後、無名塾全国公演、松竹座公演、日本で初めて北朝鮮拉致事件を扱った舞台に出演など、歌舞伎系統から新劇、小劇場などあらゆるジャンルの舞台で俳優活動を行う。その後、独立プロダクションGUM(株)を立ち上げ、「オシアウコ」として、商業映画のプロデュースを開始、実写映画だけでなく、劇場版アニメもプロデュース、小規模作品からメジャー作品まで、幹事を勤め、幅広いジャンルで作品を製作している。 「ニワトリ★スター 」(2018年/プロデューサー) 「駅までの道をおしえて」(2019年/プロデューサー) 「神在月のこども」(アニメ)( 2021年/統括プロデューサー) 「ニワトリ☆フェニックス」(2022年/統括プロデューサー)

あらゆるジャンルの舞台で俳優活動を行いその後、独立プロダクションGUM(株)を立ち上げ「オシアウコ」として商業映画のプロデュースを開始。実写映画だけでなく劇場版アニメもプロデュース、小規模作品からメジャー作品まで幹事を務め幅広いジャンルで作品を製作しているGUM株式会社代表取締役の葦澤 恒氏をお迎えし映画制作の世界について話を聞かせてもらった。29回目にして初めてのジャンルであり監督、プロデューサーとは実際どういった役割を担っているのか、意外と知られていないビジネス戦略を惜しみなく話してくれた。

1:プロデューサー業

GUM株式会社を立ち上げ10年、プロデューサー歴も10年と会社と共にキャリアを積み上げてきた葦澤氏だがまだ無名だった成田凌氏を起用した「ニワトリ★スター」という映画で内容は過激だが若者達にウケ、渋谷のTSUTAYAでは年間ランキング2位の実績を作る華々しいデビューを果たす。その後も踏み込んだ内容の作品が多い印象だが本人曰く「ポップコーンムービーよりは意味のある社会風刺もありつつ影響力のあるほうがいいなと思って」と答えてくれた。
(初めて耳にしたので注釈を入れさせていただくがポップコーンムービーとは?楽しんで観れる作品などをこう呼ぶらしい。ポップコーンを片手に食べながら気軽に楽しめ、時には驚いてひっくり返してしまうその様を比喩しているそうだ)
そもそも映画を作るにはどういった経緯と順序で進めるのかと素朴な疑問を投げかけると原作がありそれを元に作る時もあれば、俳優自らこの物語を映画にしたいという依頼や故郷に錦を飾りたいからこういうテーマでアニメを作りたいなど具体的な始まりから大まかなざっくりとした依頼などさまざまなパターンがあるそうだ。原作がなければ脚本を1から作り上げるのだが、あるテーマに対して映画を作ろうとなった時にどんなに小さい種でもそこから物語を生み出して映画を作ることができるがベンチャー企業同様に出資者を探し映画を作りたいとプレゼンをし制作費を自ら募り進めていく独立型と、小さな種でビジネス的に勝負していこうとするとリスクが大きい為、原作や人気のあるもので作り製作委員会を設け全国放映をする商業映画に分かれると教えてくれた。独立型ではまずこういった物語で登場人物の詳細、結末を起承転結で書く概要書を作りそれを元に何を伝えたいのか、なぜこれを作るのかそれがどこにウケるのか、そしていくらかかるのかをまとめた企画書を制作するのだが驚くことにこれらを担っているのがプロデューサーだそうだ。葦澤氏のように自分たちで資金を集めて動くプロデューサーもいれば大手に勤めお給料をもらいながら作るプロデューサーなど色々とタイプはあるそうだが、企画書を出してプレゼンをし共感を得て作品や商品を世に出すということは他のビジネスに通じるものがあるが、それをプロデューサーの役割だとは正直知らなかったのでとても驚いた。

2:映画制作プロセスと収益構造、キャスティング方法

映画を作るプロセスの中でプロデューサーとしての役割が少し見えてきたが資金調達をする手段としてベンチャー企業と全く同じだと話してくれた。異業種交流会に出向き繋がりを作り投資家を募るのだが1億円の予算の場合は1億円を集めて何%かを出資していただき売り上げを5~7年スパンで還元をしていくのだが企業はある程度作った商品やサービスなどを元にプレゼンをするが映画は企画氏の段階で大きな金額を集めなければいけない「一撃必殺ですよ」と笑うが、今は10年という実績と信頼があるから大手も話を聞き相手をしてくれるが駆け出しの頃はとても苦労をしたそうだ。では映画を作った後の売り方はどうしていくのかを尋ねると規模の大小は関係なくキャッシュポイントは大きく分けて6つで、まずは耳にしたことも多いであろう映画館での興行収入、そしてweb配信、これは動画配信事業社に作品を買ってもらい我々ユーザーがストリーイングサービスを利用し鑑賞できるが最近は続編が利用しているサブスクとは別会社から配信され契約しないと観れないなどもどかしい思いをした人もいると思うが良い条件で買ってくれるとなると致し方ないことでありビジネスとしては当たり前のことではあるができれば同じ会社から配信して欲しいなと思ったことは一旦伏せておこう…3つ目はグッズ販売で新たに出ると買ってしまうファンも少なくないだろう、そして所謂「番販」と呼ばれる番組販売でテレビなどの放送事業者もしくは制作会社が放送内容を販売する、そして今日本映画界で一番苦しいと話す海外への売り出しでアニメは売れるが実写はなかなか難しく課題となっているそうだ。6つあると言っていたが5つまでしか聞けなかったので最後の1つは何かを考えてみるのも面白いかもしれない。この中でもやはり指標になるのは興行収入で半分は映画館で収益を得て後の何割かを他で得ることは揺るがないそうだが最近は映画館やwebで同時配信、自社制作など少しずつ変わってきているが、やはり映画館での興行収入が大きく左右するそうだ。作品に大きく影響するのは主演を初めとした出演者のキャスティングだと思うが、資金調達をするときに「誰が出るのか」によって良くも悪くも有名であればあるほど資金が集まる可能性は高くなりあの人が出るならと決まることもあるからこそキャスティングは作品の要であり非常に大きな選択になる。脚本が出来上がったときにその役柄に合わせて誰がいいかを選んでいくときに使う年代別に分かれた専用のエクセルシートがあり予算や売り上げから逆算してこれくらい知名度のある人は入れるべきではと監督、脚本家、プロデューサで議論を交わし決めていく。しかしホラー映画はこの知名度はあまり関係がないらしく「無名の俳優でも話が面白いからそれで成立する」となかなか聞くことができないエピソードも教えてくれた。

3:認知度の低さ

3~4年前に次の世代を育てたいと色々なものを作れる力を持った人が多いほうが映画界にとっても良いとからと考えGUM社のSNSからプロデューサーを募集しフォロワーも3~4000人いたことから少なくとも100~200人は来るかと思ったが「0だったんですよ」と、とてもショックだったと話すがそのときにプロデューサーって何やってるかわからないよなと知名度の低さに気付きプロデューサーの仕事内容や重要性を広く知ってもらう必要性を感じたそうだ。ではこれから演者側ではなく映画界に入りたいと思っている人はどれだけいるのかを質問すると自分たちで作れる時代になっていてそれこそ携帯などで撮りショートドラマの配信をSNSで出来る時代で「めちゃくちゃいいですよね」と話しつつ葦澤氏もそういった作品を観て良いディレクターはいないかとチェックをしている反面そういった作品ではプロデューサーの役割をしている子も絶対いると一緒にやろうと思う人材を探したいと「ゼロから全部教えたい」と思っているそうだ。しかし逆に異業種の人と協力して映画製作に取り組む機会やそういった人たちと新しい視点で映画を作りたいと考えているそうだが、伝統や今までのやり方はもちろん大事だが新たなパターンやマネタイズを増やしたいからこそ異業種の人が入ることによって大きな変化が生まれることを葦澤氏自身が強く期待しているようにも感じた。

プロデューサー業について詳しく聞いたがビジネスマンとしての役割を大きく担っていることが分かった。映画業界だけではなく広い視野で考え多方面からの視点で物事を考える人だということが垣間見れたがそれも制作会社やプロデュース会社に勤めていたわけではなく元々は演者側で業界にいたからこそなのかもしれない。後半ではこれまでの経歴やなぜプロデューサー業を選択したのかを聞いてみたいと思う。