GUEST INFORMATION
近本 あゆみ
株式会社ICHIGO 代表取締役
株式会社ICHIGO
https://ichigo.com/
<ゲストプロフィール>
早稲田大学卒業後、株式会社リクルートに入社。
入社2年目から国内向け通販の新規事業にて企画を担当。
その後リクルートでのECの経験を活かし、日本のお菓子は海外の幅広い人に受け入れられると考え2015年にmovefast(現
ICHIGO)を創業しサブスク型越境ECサービス「TokyoTreat」をローンチ。
3児の母でもあるワーキングマザー。
1:感性の異文化共有
日本のプロダクトや文化を海外の方にもっとより深くよく知ってもらいたいという思いで日本人がおすすめする日本のものを海外に届けたいと、まずは日本人の目で選ぶという事を創業以来ずっと続けている。しかしマーケットは様々な国の方が担っているのだがその理由としては海外の需要や情報が掴みきれない点や外国人の好みにマッチしているかなどどうしても分かりきれない部分や、意外と日本人が気付いていないがこれはやめたほうが良いよという事などの事実確認や情報収集だけではなく新たな視点と違った角度からの意見が出てくる面白さもありこの体制になったそうだ。味覚と同様に視覚や感性にも日本人と海外では少なからず相違が生じるのは何となくわかるような気がするがなんとなくでは顧客を獲得することはできない。それ故、パッケージデザインは勿論の事webサイトのデザインも外国人メンバーが担当している。日本のサイトと海外のサイトの大きな違いは「アメリカはシンプル、日本は情報量が多い」と、分かり易く代表的な2社を例に挙げながら教えてくれた。Rakutenは複数の画像や日本人特有の比較検討したい要望に応えるために事細かに書かれた詳細や説明文など1つの商品に対しての情報量が多いが、Amazon社は実にシンプルで画像と詳細のみ。どちらが良いと言う訳ではなくどちらに慣れ親しんできたかの文化の違いであって見やすい使いやすい選びやすい方を利用者が選択すれば良いのだ。ICHIGO社は海外ユーザー向けのサイトのため、目指すべき姿も含めてアメリカ企業を参考にしたサイト仕様になっている。パッケージデザインも日本人が思う和風はどこか侘び寂びを感じるような雰囲気を重視するが海外では富士山や桜などの分かりやすいモチーフを大きく施さないと日本だと分からないという意見もなるほどと思った。
2:異なる常識
10カ国くらい出身国が違う方が約120名ほど在籍するICHIGO社は公用語は日本語と英語だそうだが言葉以外にも文化の違う人たちが集まると就業規則を定めることも大変だったのではないだろうか。日本で言う就業時間=定時はその時間までに出社し仕事を始められる状態であること、その時間まで仕事をしその後帰るというのが「常識」ではあるが国によっては開始時間の15分以内だったらセーフだよね、その時間に帰るから支度しておこう、少し早いけど帰っちゃおうという人もいる様だ。これはどちらが正しいかは慣習や文化によって異なり捉え方の違いでもあるから決して頭ごなしにダメですよ!と言うのも違う気もするが、近本氏は入社前に日本の企業なので日本の労働基準法や会社法に従って運営している事、昇級昇格、有給なども国によって異なるためしっかりと説明をし納得した上で入社をしてもらうのだという。日本で当たり前の事として暗黙の了解で通っていることは勿論、通じない。これは日本企業でも参考になり取り入れるべきではないだろうか。昔ながらの慣習や言わなくても分かるだろうは現代社会では時代遅れだということをしっかり認識して欲しいと強く思った。外国の風習や慣習全てに合わせることはせず、あくまでも日本の企業での働き方を基準にしているが外国人にとって働きやすい働き方の制度を設けている。1番特徴的なのが1ヶ月間、日本以外のどこからでも仕事をして良いというワーケーション制度で1ヶ月の中であれば有給と組み合わせて旅行先からでも良く、遠く離れた国出身の人は家族とゆっくりと過ごせるなど利点しかなく素晴らしい制度だ。更に、日本の就業時間の中で4時間被っていれば良いという配慮も時差がある国出身の人にも考慮しており、さすが10カ国ほどが集まるICHIGO社であり優しさに溢れた制度だ。常に誰かしらが使っていると笑って話してくれたがこれは絶対に使いたいと誰しもが思うのではないだろうか。また社員研修で海外に行き全員で食事をしお酒も飲んだりアクティビティをしたりと日本の会社と言いつつもオープンでとても楽しい雰囲気が伝わった。
3:お菓子という日本文化
起業当初からやりたいことは一貫して日本の文化やプロダクトを海外に発信していく事だが越境ECという販売チャンネルをやってきたがそこから実店舗のサービスを国内や海外でやっていきたいと思っているそうだ。日本に来る観光客や海外で直接、日本の文化を届けられる店舗を構え直接販売をしていく構想のきっかけは和菓子の人気に通じ、日本の伝統的な文化に海外の方が興味を持っている事を感じるそうだ。その反面、職人が減少し継承が難しい状況に危機感を感じているのも然りで、その役割を果たす意味でも現在、ICHIGO社で取り扱う和菓子のボックスは家族経営など小規模で営むお店の商品の採用も積極的に行い日本の和菓子が海外ではこんなに価値があり喜ばれているんだよと伝え、大きくしていきたいと業界が盛り上がっていくための取り組みも行っている。日本人の若者たちが和菓子離れをしているかもしれないが、伝統的なお菓子が海外で受け入れられ喜ばれたらこんなに素晴らしい文化をなくしてはいけないと奮起し和菓子職人の門を叩く若き職人も増えるはずだ。いささか海外でバズったから「やってみようかな」は、不純な動機ではないかと思ってしまうかもしれないが、周りに言われては初めて気づくなんて事は日常茶飯事であり、憧れのアーティストが勧めたものに興味を持つことはよくある話で、古き良き伝統を継承するきっかけになるならば海外へ発信し改めて自国の良さに気づくその遠回りは今とても重要な事の様に思う。情報が溢れる現代だからこそ、自国の良さを再認識することはとても大切だが天邪鬼な日本人にはとても難しいのも事実である。そのきっかけをも運ぶ素敵なボックスだなと話を聞いていて感心してしまった。世界中を探しても「お菓子」で駄菓子、和菓子、玩具菓子、工作菓子と幅広いジャンルを取り揃え楽しめるのは日本だけではないだろうか。
たかがお菓子されどお菓子。また新たな日本文化を認識するきっかけをくれた自分にとっても非常に重要な回であった。
社名の「ICHIGO」は一生に一度限りの機会や出会いを意味する一期一会の想いも込められている。お菓子を手にした人がそれを体験するかもしれないし、それを手にして広めたことでまた誰かの出会いにも繋がるかもしれない。1号の意味もあり、その出会いが誰かの人生の最初の体験になるかもしれないし1番になるかもしれない。さまざまな意味が交差する社名そのものの事業を展開していてワクワクしか芽生えない。
一期は一生、一会は一度の出会いを意味するが、一度と言わず何回でも出会いを提供してくれるICHIGO社の新たな事業にも期待していきたい。