GUEST INFORMATION

近本 あゆみ

株式会社ICHIGO 代表取締役

株式会社ICHIGO
https://ichigo.com/

<ゲストプロフィール>
早稲田大学卒業後、株式会社リクルートに入社。 入社2年目から国内向け通販の新規事業にて企画を担当。 その後リクルートでのECの経験を活かし、日本のお菓子は海外の幅広い人に受け入れられると考え2015年にmovefast(現 ICHIGO)を創業しサブスク型越境ECサービス「TokyoTreat」をローンチ。 3児の母でもあるワーキングマザー。


日本の素晴らしいプロダクトや文化を世界中に発信することをミッションとした株式会社ICHIGOの代表取締役 近本氏をお迎えし、日本文化、海外の文化慣習、常識とは何か。離れてみて初めてその価値を再認識する日本のお菓子についてとても興味深く考えさせられる深い話が存分に聞けた。懐かしのお菓子や自分至上No.1のお菓子を思い浮かべながら是非、聴いて頂きたい。

1:越境EC

主な事業は日本のお菓子をオリジナルボックスに詰め合わせ海外在住の顧客に届けるサブスクリクションサービス「越境EC」で、ボックスは大手メーカーの定番商品や期間限定商品、和菓子、キャラクター雑貨、日本と韓国のコスメを詰め合わせにした4種類がある。その中でも日本のスーパーやコンビニなどで手軽に買えるような大手メーカーのお菓子を詰め合わせたボックスが1番人気だそうだ。我々には身近で昔から慣れ親しんだお菓子が海外では目新しく面白いねクレイジーだねと喜ばれるのは不思議な気もするが、海外のスーパーで見るカラフルなお菓子に私たちも同じく心が踊るのと同じ感覚なのかもしれない。駄菓子屋さんに昔からありさほど驚きもせず定番として目にする長いグミはなんでこんなに長いの?と驚かれ実験のように何種類かを混ぜて完成させたり、型からくり抜きいかに上手に出来るかと工作のような所謂、玩具菓子は海外では大人が夢中になりこぞって買うほどに人気があるそうである。現在は世界180の国と地域に200万人の登録者がいるとはどれほどの人気かが窺えるが、メインはアメリカで70%を占めており、残りの20%がヨーロッパ、10%がアジアや中東アフリカである。アジア圏に人気があるのかと思いきや大手メーカーは工場や生産などの流通手段を既に現地に持っている点と、国間が近いこともあり直接日本に来て買えるなど意外と利用者が比べて多くないのも納得である。200万人の登録者数にも驚いたが初めから爆発的に人気があったわけではなくデジタルマーケティングや自社のSNS運用など地道にしっかりと積み重ねてきた結果だと振り返るが、市場に入ったタイミングはすごく良かったと話してくれた。2015年3月にローンチした当時はアメリカでサブスクボックスが大流行中で、市場調査を重ねサブスクは今後、広がりを見せると確信し日本からアメリカのみならず全世界へ向けてやったら面白いんじゃないかと始めたのがきっかけだそうだ。今やサブスクが当たり前となっているが9年前から国内ではなく海外に向けて始めていたとは近本氏の感覚やセンスはいつからどのようにして培われていたのだろうか。

2:サブスクボックス

近本氏の先見の明が気になりなぜアメリカに向けてローンチをしたのかを尋ねた時にそのマーケティングリサーチ力がとても素晴らしい事に気が付かされたのだが、事業を立ち上げるきっかけとなった前職の話を交えた話が非常に興味深かった。新卒で入社したリクルート社で国内向けの通販の新規事業に携わっていた2010年代初頭は外国人観光客が増えインバウンドという言葉が出てきたばかりの頃で爆買いなどと呼ばれる程に家電や化粧品やお菓子などを買って帰る海外観光客を見てこれは国内通販のノウハウを活かし海外に向けてできたらいいのではと漠然と思いついたそうだ。そこからメインマーケットをアメリカか中国かどちらかにしようと考えた時に中国は今も昔も変わらずアメリカの2倍の市場を誇り、それだけ日本の商品を買ってくるがその分規制が厳しく、当時は東日本大震災の後だったこともあり荷物の配送場所も制限されたりと中国に向けて安定的にECをやっていくことは難しいと判断しサブスクボックスが広く流通している背景もリサーチ済みだったこともあり、ある程度ならいけるのではないかとアメリカを選んだそうだ。その判断が功を奏しアメリカでのサブスクブームにうまく乗りトントン拍子だっと表現していた様に、当時はアニメグッズや生鮮食品、レシピなどあらゆる物がサブスクで届き、その中でもシェーバーのサブスクは消耗するタイミングで替え刃やシェービングクリームなどが届くサービスが大人気となり数千億円規模で売却されるなど正にバブル状態の背景も後押しとなっていた。更にリサーチを続けると日本のお菓子のサブスクを見つけたが外国の方がやっていた為、漢字で表記され日本ぽいが実際には異なった物、違う国の物やアメリカのスーパーで簡単に手に入るものなど「自分だったらもっとうまくできるのに、もっと需要を掴めるんじゃないか」と思い、日本のお菓子のサブスクボックスを始めることを決意する。日本人には馴染みがあるが海外では新鮮に感じる物の代表都市と「キットカット」の例を挙げてくれたが、元々は海外のメーカーで赤いパッケージの定番商品は世界中どこでも手に入るが日本で発売されている限定の味がとても人気だそうだ。お客様からのリクエストにも柔軟に取り入れているそうだが、商品の選定方法はどうしているのか?ここでもまた面白い手法を取り入れていた。バイイングつまりは買い付けを担当しているのは日本人でその理由は日本の良いものを目利きするのはやはり日本人にやってもらいたいという思いと、ターゲットであるお客様の好みが分かり趣味趣向が近い外国人にマーケットを担当してもらっている。そして最終の試食はバイヤーとマーケターが一緒に試食をし、これはあなたの国でウケそうだよねなどパッケージはも含めて商品全体の議論を重ね商品を決めているそうだ。日本人だけではきっと偏りが出てしまうが外国人だけでは見つけられない物があり、異なる国の人同士が意見を出し合い決めていく中で選ばれたお菓子たちは世界共通で美味しい面白いと認められた最高傑作と言っても良いのではないかとそのお菓子は一体どれだろうと興味をそそられてしまった。そして届いた時にワクワクしてもらえるようにパッケージもオリジナルで制作するなど拘っているのだがその体験をワクワク体験と社内で呼んでいるのを聞いて近本氏はビジネスウーマンでありながら子供の心を持ち続けるとても可愛らしい人でもあると感じた。

3:企業のきっかけ

前職での経験を活かしICHIGO社を起業したきっかけを聞かせてもらった。大学時代に友人に誘われ経験した学生企業を通じて、何かを作ることの面白さに魅了され将来何かできたらいいなと思い始め、いろいろなことを経験させてもらえる環境で若い人が活躍しているリクルート社に入社を決める。前述した通販事業に携わり活躍をする中でもまだ独立は本格的に考えていたわけではなく、ましてやグローバルにサービスを提供する現在の事業内容を始めるとは全く思っていなかったそうだが、共に創業をした日本に留学をしていたインドネシア人のパートナーとの出会いが運命を変えた。驚くことに近本氏は留学の経験がないそうだが、パートナーはアメリカや台湾など様々な国に住んでいた経験があり色々な文化的背景に理解のある人だったことも日本の文化を世界中に発信していきたいというビジョンにマッチし2015年に創業することを決意する。当初はアメリカでやってみたら面白いんじゃないかと始め続けていく内に日本のお菓子が文化として海外で認められ受け入れられ求められていることが分かり、もっと日本の文化をきちんと発信できる会社にしていこうと日々奮闘していると話してくれた。

まだリクルート社に在籍中に起業を決意をしたそうだが社内の人や周りからもやってみなよ背中を押してくれたが親御さんはさぞ心配だったのではと尋ねると「昔から言う事を聞かないタイプだったんでまたおかしなことを言っているなと思っていたかもですね」と笑うように、1度決めたら突き進む人なのだろう。それにはとても芯があるから成り立つことでもある。後編は近本氏のもっと奥深くを聴かせていただいた。