GUEST INFORMATION
中原 久根人
株式会社souco 代表取締役 中原 久根人
・株式会社souco
https://www.souco.space/
代表取締役 中原 久根人
<ゲストプロフィール>
慶應義塾大学経済学部卒業。大学卒業後、株式会社いい生活、株式会社iettyなど不動産領域で事業開発を12年経験。不動産領域のデータベース構築と物件マッチング、ポータルサイト運営に精通。2016年、soucoを創業。2017年10月オープンβ版サービス提供開始を経て、2019年6月に正式版サービスの提供を開始。データベース化が進んでいない物流領域で新しいビジネスモデルの構築に挑戦している。2020年現在、登録企業数約1600社(荷主企業と倉庫提供企業の合計)の空き倉庫情報を管理。利用したい事業者とマッチングを開始している。
1:事業内容と経緯
倉庫シェアリングサービスについて具体的にどういう手順で利用ができるのかを教えてもらった。まず一般的な倉庫は契約から利用できるまで半年から一年掛かると言われている。それがsoucoでは翌日から利用可能でwebサイトから電話で荷物のサイズや希望の地域を伝えるのだがメールではなく電話が一番確実だった事からこの方法を採用している。次に気になる料金だがダンボールの3辺合計140サイズであれば1日10円、パレットに乗る物量だったら1日100円で利用ができとても分かりやすい料金形態になっている。見積もりに同意したら電子契約をしアカウント発行後に最短で翌日に利用ができ、あとは集荷、保管、配送を全て行ってくれるので荷物だけ用意すればお家で電話一本で完結し、更には預けた荷物を戻すだけではなく希望の場所へ配送まで担ってくれる至れり尽くせりのサービスである。元々は不動産業界に10数年いたとは言え画期的なこのサービスを始めた経緯としてお部屋の情報は溢れているのに倉庫の情報が一切ない、どんどんデータベース化され何でも検索ができる現代で倉庫だけが検索できない見つからない世界はないだろう、誰もやっていないということはいずれ誰かが始める、やっていないということはいかに大変なことか目に見えていた。不動産業界にいた時代も足を使えば見つけられる。数は稼げることはわかっているが苦労することも充分分かっていた上で誰かが先に始めうまくいったのを耳にした時に、自分も考えていたんだよなと言いたくない、兎に角それだけは嫌だと決意し企業をしたそうだ。物腰の柔らかい優しい口調とは裏腹に苦労することが分かっていながらも飛び込むその思いは相当なものだったと感じ取れた。
2:転換期
今年9期目のsouco社は現在は全国にいるメンバーがフルリモートで業務を行っており、やはりコロナ禍から働き方も劇的に変わったと振り返る。あそこにいけば倉庫がある、開拓しなければと足を使い訪問を続けていたが倉庫には沢山の従業員の方がいて一人でも感染者が出てしまえば営業停止となる非常にセンシティブな時期だった事もあり、感染対策のために来ないでくれと言われ、リモートで商談や面談を開始する。今までは対面が当たり前、うちの倉庫を見に来てくれと言われたら全国どこでも出向いていたので多少のショックや寂しさはあったが家で全国各地、何件も取引ができるようになり効率が良いなと現在でも採用し、定着したそうだ。もう一つの転換期として今、現在を挙げてくれた。当番組でも何度か取り上げられた物流業界が直面する「2024年問題」と呼ばれる労働時間規制の影響や、ドライバー不足などの課題。勿論、souco社も一つの問題として捉えていたが自社のサービスで分散型の拠点を活用することで、これらの課題に対応できる可能性があることを示唆した。ネットショッピングが日常化となり荷物が届かないんじゃないかと不安視する人もいると思うが実はこういった荷物は日本全体で運ばれている荷物のほんの10%以内に過ぎず、90%は企業間の物流である。つまりは工場から工場へ、工場から卸業者の倉庫へと運ばれている規模の大きい荷物ゆえ大型トラックでの問題であり、倉庫から我々に届く荷物はラストワンマイルと呼ばれ短距離をメインとする軽トラックなのでまた話が違うそうだ。そこでsouco社のサービスが活きるわけだが、一気に運ぼうとすると数日かかるものを一旦、倉庫へ在庫として保管しそこから必要分だけ運び出してもらうことで拠点が分散化され且つハブとしてのポジショニングにもなり物流が止まる事なくスムーズに行うことができる。やりながら発見することが多いと前編でも話してくれたが、今までの倉庫の使い方ではない新しい使い方、自社が持つネットワークの数そのものが価値に変わり今の時代にすごくフィットしていると手応えも感じているそうだ。
3:分岐点ではなく全ての中心地へ
とは言え、以前までは走れば走っただけ稼げたが、距離と時間が制限されたドライバーが転職などで業界から離れてしまっているのも事実であり、労働環境を改善するために発足されたことがもっと働きたい人たちにとっては働きづらくなっている。業界全体が、いや我々消費者もいかにドライバーに甘えていたかが浮き彫りになった2024年問題について中原氏も今後も出口が見えないものと捉え、倉庫を経由地として広めたいと話してくれた。前編のお米農家さんの事例を踏まえ地方からの物流の効率化や、地方から大都市圏への物流が課題となる中、消費地の近くに分散型の拠点を設けることで物流の滑らかさを実現できると考え農家などの地方の顧客にとっても有益なサービスになると期待を示した。こういった倉庫の可能性を存分に発揮した先には、まだ知られていない隠れた名品や埋もれてしまっている日本の伝統工芸品が我々消費者の手元に、新たな発明品、技術の向上などが企業へと倉庫が経由地や分岐点ではなく中心地となる日もそう遠くはない、むしろ倉庫の重要性が広く知れ渡る日が来ることを願うばかりである。何よりもこの便利なサービスを沢山の人たちに利用して欲しいと強く思い、この記事が地方の農家さんや人手不足に悩まされている人たちに届くことに期待を込めて締めくくりたいと思う。
社名のsoucoの由来を尋ねると「商標が取れる名前だったんです」と笑いながらチャーミングに答えてくれたが勿論、それが第一理由ではなく現サービスを提供するにあたり物流業界のことを調べていくと出っこみ引っ込み(凸凹)のある需要のばらつきが大きい業界だと感じそれを滑らかにし需給のバランスをとりやすくしたいと考えロゴも出っこみ引っ込みしてはいけないと「k」ではなく「c」を採用し頭を揃え丸い文字で滑らかさも表現したそうだ。更に小文字にしたのは小さいロットで小さい倉庫として利用できますよという思いも込められていると聞き、率直にロゴに込められた想いとストーリーが素敵だと思った。
毎回ゲストを招き話を聞いていると性格や人柄が事業に結びついていると感じることがある。中原氏は兎に角、柔らかく物と人を結びつける橋渡しのような人であり、いいですよと受け入れてくれる寛大さも感じられる。
”倉庫のような人”とは表現をしたことがないが、大きく受け入れてくれる点は同じかもしれない。
何より人がやりたくないなと目を背けていたことを始め、沢山の人を助けていることには変わりはない。この先も直接ではなく間接的に、主張せずに控えめに沢山の人たちを助け日々に便利さと幸せを届け続けるんだろうなと思うそんな人であった。