GUEST INFORMATION
中原 久根人
株式会社souco 代表取締役 中原 久根人
・株式会社souco
https://www.souco.space/
代表取締役 中原 久根人
<ゲストプロフィール>
慶應義塾大学経済学部卒業。大学卒業後、株式会社いい生活、株式会社iettyなど不動産領域で事業開発を12年経験。不動産領域のデータベース構築と物件マッチング、ポータルサイト運営に精通。2016年、soucoを創業。2017年10月オープンβ版サービス提供開始を経て、2019年6月に正式版サービスの提供を開始。データベース化が進んでいない物流領域で新しいビジネスモデルの構築に挑戦している。2020年現在、登録企業数約1600社(荷主企業と倉庫提供企業の合計)の空き倉庫情報を管理。利用したい事業者とマッチングを開始している。
物流施設や倉庫の空きスペースを抱える企業とスペースを必要とする企業の情報を集約し、マッチングを行うサービスを運営する株式会社soucoの代表取締役、中原氏をお迎えし事業内容などを伺った。
1:倉庫シェアリングとは
倉庫シェアリングという事業を行い、いつでも好きな時に好きなタイミングで好きな期間、間借りできるサービスを提供しているが倉庫は1つも保有していない…ん?どういうことだ?と、率直に思い詳しく聞くと、とてもわかりやすい例えを交えて教えてくれた。アパートやマンションは何室空いているなどの空室率が明確であるが、倉庫は空間なのでピッタリ埋めること自体が難しい棚があったり作業スペースがあったり空間をマネージメントするのが倉庫業だが、天井まで隙間なく物を積み上げる事は防災面も含めできないため埋まっているように見えるが実は倉庫全体の2割が空いている状況だそうだ。しかし2割と言えど中途半端なため、家のように1室貸しますよとはいかない。大体8割を稼動させてビジネスを行っているのが業界での一般的だったが空いている2割を使わせてくださいと始めたのがsoucoである。自宅でも空いているスペースはあってもそこにぴったりの棚や収納を探し埋める人も居る反面、まぁいっかと何となく空いたままにしているスペースがあるご家庭も少なくないのではないだろうか。それがかなりの広さがある倉庫だったら尚更、ピッタリと埋めるシンデレラフィットを実践することは難しいように思う。余っていても仕方ないと当たり前にしていた空間に着目したのは中原氏が元々、不動産業出身で部屋探しのサイトを作る側だった時に倉庫を探しの問い合わせを度々いただくことがあり情報を探すとどこにもなく空いているか云々の前に倉庫自体がどこにあるのか分からない状況だったことから、倉庫全体の情報を整理する、整えるということ自体が社会の役に立つのではと当初はポータルサイトを作ろうと始めるが調べ進めていくと2割が空いているという状況に衝撃を受ける。ちょうどその頃にシェアリングエコノミーが注目されていた事をきっかけにサービスをスタートさせるが、そもそも情報がないところから倉庫を集めることに苦労をし、1000件電話をして1件もアポイントが取れない状況が続き最初の1年で10件しか集まらなかったそうだ。もう無理かなと心が折れる思いもしたと振り返るが地道なコミュニケーションの積み重ねと地道な努力が実を結び倉庫業を営む地域の名士らの理解と支援を得ながら、徐々にネットワークを広げていき約10年で全国3000拠点への拡大に至るが情報が何もなく前例がない中でこの数字は想像を遥かに超える大変な努力の積み重ねの賜物だと思う。
2:倉庫の実用性と活用方法
通常の倉庫は300坪以上は1年以上、大体3~5年の契約がスタンダードであるが空きスペースの利用の為、柔軟に使わせてくださいとsouco社が交渉と契約をまとめダンボール1箱から1日単位で10円から利用ができ契約や期間、物量の縛りもないサービスを提供している。利用者はsoucoのWebサイトで立地や料金、利用期間などの条件を設定して倉庫を検索し、レンタルを申し込んで契約書にサインをするだけですぐに倉庫を利用でき、預けるための配送と使いたい時に倉庫から届けてくれる配送もすべて請け負ってくれるため自分でどこかに持っていく、受け取りに行くなどの煩わしさも一切ない。一方、スペースの提供者は、空きスペースの情報を登録して利用者からの申し込みを待つのみと、利用方法もとても簡単で料金も一律なのもありがたい。
そして通常の荷物以外に企業向けとしても人気で、例えば季節商品のクリスマスケーキやおせち料理などは8月頃から作り始めないと間に合わないそうで昨今は驚くほど進化している冷凍技術によって作ってすぐに冷凍する企業も増えているが製造をしても保管する場所がない、作れば作っただけ売れる商品も保管場所がないと無駄になり食品ロスや売り逃しに繋がる。そういった温度管理などに対応している倉庫とも連携しているので季節商品の在庫を柔軟に確保ができ、機会損失の防止や、一定期間だけ借りられるのでコスト削減と在庫リスクの低減などメリットが多く人気なのも頷ける。その他にも食品製造業、機械製造業などの製造業や小売卸業、最近は建築や建材などの建設業も増えている。ビルやマンションを建てるときに規模に合わせて色々な資材が必要となるが都度、現場が変わるため固定の倉庫が持ちづらく建設現場にトラック渋滞が生じることもあるそうだがそれを拠点ごとに集約する場としても倉庫は活用ができる。また、家のリフォームをする際にトランクルームに入らない大きな家具などを一時的に倉庫に預けることで早く工事ができ、リフォーム会社もスムーズに作業ができるため早く引越しができるなどの双方にとって利点のある使い方も非常に興味が湧く。
3:工夫こそが本領発揮
少し話を聞いただけで倉庫と言えども様々な使い方を教えてくれたが、工夫を凝らしたユーザーから気付きや発見をもらうこともあるそうで幾つか実例を紹介してもらった。コロナ禍も落ち着き待ってましたと盛り上がりを見せた夏の風物詩のフェスでは、ステージで使用されるスピーカーや装飾などの機材は勿論のこと、楽しみの一つでもあり目玉にもなっているフードトラック。お目当てのフードがすぐに売り切れてしまいがっかりした経験をした人も多いと思うが、同じくトラックに積めて持って行ける量が限られてしまい売り手も提供したいのにできないジレンマと心苦しい思いをしているのも同様である。そこでsouco社は先手のように食品も保管できるサービスを完備しているため仕込みを終えた商品をフェスの期間中に倉庫に預け足りなくなったら補充をしてもらうことで止まることなく循環できフードトラックでありながら大きな冷蔵庫に化した倉庫を完備したまさに移動型のレストランが出来上がるというわけだ。この仕組みを知らない他の出店者は、売り切れることなく提供できて一体あのお店はどうなっているんだと驚いたことだろう…想像しただけで申し訳ないが笑ってしまう。またフェスでは大掛かりなステージも見ものだがその組み立てのシミュレーションとして広さが十分にある倉庫を利用したというケースもあり、事前に組み立てができ確認できることは事故の防止にもなりとても良い利用方法だと感心した。
そして今、深刻となっているお米問題の対策として利用されているケースも教えてくれた。北海道の農家さんは関東のお客様に直送すると送料がお米の値段を超えてしまうこともあり悩んでいたところ一旦、関東の倉庫にまとめて送りそこから一箱単位でお客様にお届けすることで送料がグンと下がりコストを削減できたそうだ。こういった有効活用の事例は従来の倉庫業界にイノベーションをもたらし、様々な業界でニーズに応えられる柔軟なソリューションを提供していることが分かる。
ダンボール1つから食品、建設資材など使い方が未知数で可能性に満ち溢れていると言っても過言ではないが、まだまだ課題がありそうなのも事実である。業界が抱える問題や対策、今後の展望など詳しく聞いてみたいと思う。