GUEST INFORMATION
一瀬 健作
株式会社ペッパーフードサービス
株式会社ペッパーフードサービス 代表取締役
https://www.pepper-fs.co.jp/
1981年生まれ。大学卒業後、大手外食企業で経験を積み、2013年にペッパーフードサービス入社。創業者である父・一瀬邦夫氏のもとで実務を学び、2022年に代表取締役社長に就任。いきなり!ステーキ事業の再建や新業態開発に取り組み、変化する外食市場での持続可能な成長を目指している。
“いきなり!ステーキ”などステーキを中心としたレストランチェーンを運営する株式会社ペッパーフードサービスの代表取締役社長CEO 一瀬健作氏をお迎えし事業展開やビジネスモデルなどNOW RADIOのテーマであるビジネスに活用できるヒントを引き出していく。「美味しいステーキをより多くの人に、お腹いっぱい食べてもらいたい」その想いに込められた真意や事業の歴史や戦略について語ってもらった。
1:立ち食いステーキ
株式会社ペッパーフードサービスは“いきなり!ステーキ”を国内175店舗、“炭焼きステーキくに”が3店舗、“こだわりとんかつつき亭”を1店舗展開している。その中でもやはり、いきなり!ステーキが2013年12月に銀座4丁目に1店舗目を出店した当時は「ステーキを立ち食いで?」と、かなりのインパクトがありとても衝撃的だったのを覚えている。この業態を始めたきっかけは、高級レストランの料理をリーズナブルな価格で味わえるという画期的なコンセプトが口コミやメディアで話題となり人気を博した「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の立ち食いで原価率を70~80%に抑えるという点からヒントを得て両店を手掛ける坂本孝氏に一瀬氏の父親がこれをステーキでやったら面白そうだと構想を話したそうだ。「俺の株式会社」が手掛けるお店は立ち食い形式で高級食材を味わえるというこれまでにないビジネスモデルでトレンドに敏感な人や高級料理を気軽に楽しみたいという人たちに響き、口コミを中心に広がりメディアでも取り上げられたことで更に人気に火がついたのだが、同じ業態を模倣することを直接話をし尚且つ「俺のステーキっていう名前使っていいよ」とまで言ってもらったそうだが一ノ瀬氏の父は「いきなりステーキという名前をつけたいんだ」と返答をしたと聞き経営のトップに立つ人は常人では考えられない行動や発言をするのだなと改めて感じた。しかし、その店名には料理を食べる最初の一口が1番美味しいだから前菜などを飛び越えていきなりステーキを食べても良いじゃないかという想いが込められていたからだそうだ。確かにメインディッシュにたどり着く前にお腹いっぱいになってしまい何とも複雑な気持ちになった経験は誰しもがあるように、空腹こそ最高の調味料とはよく言ったものだがその通りである。またハレの日に食べるご馳走のイメージがある厚切りのステーキを70~80%の原価率でリーズナブルに食べられたら流行るのではないかという思惑もあったそうだが立ち食いのスタイルで提供することで回転率を上げ原価率をカバーし、さらに100g単位での計り売りでグラム単価を下げお客様にも厚切りのお肉を食べる際のワクワク感を与えた。この量り売りは功を奏し立って食べることでお腹への圧迫感がなく300gの肉もペロリと食べられるという嬉しい現象も起きた。また厨房でもカットをしてすぐに焼き始めるため調理時間と提供時間も短く滞在時間も平均20分と短いため1時間あたり1人20分を3回転すれば60人になり、滞在時間が長くたくさん注文する1時間40名よりも客単価は下がるが売り上げとしては十分採算が取れるようになったのは思いがけない相違点だったと振り返った。
2:時代に合わせた部位の提供と肉マイレージ
利用するお客様の年齢層はオープン当時は40~50代の男性のおひとり様が中心だったそうだが、最初のオープンから10年を経て時代と共に年齢層も上がり50代だった方が60代となり定年退職や外hそくで使える金額的な点も変わりお客様層の変化に自分たちもマッチしていかないといけないと価格帯やメニューも新たに創造していく必要性があると話してくれた。20代30代の若い世代を増やすために個店販促であったりリーズナブルにお腹いっぱい食べてもらうために販売促進のフェアや各国からの輸入量をある一定量確保できたものでテスト販売をしそれをキャンペーンとして打ち出し好評だったものをグランドメニュー化するなどの企業努力の裏側も教えてくれた。一般的にはステーキと言ったらサーロインとフィレステーキの2種類がメインで、そこにリブロースや赤身肉などの好みが加わるが、創業当時からダイエットブームや体を鍛え筋肉を作る人たちが増え健康志向の高まりと共に脂身の多いものよりも赤身の肉を食べるという文化が日本でもどんどん根付いていき、ステーキでリーズナブルに良質のタンパク質を摂りたいという思いと赤身肉のブームが相まって一気に人気となったが、時代と共に少しづつメニューも変え流行に乗るだけではなくお客様の要望に寄り添ったメニュー開発の企業努力が10年間も続いている要因だと感じた。また、独自のポイント制度「肉マイレージ」は、食べた肉のグラム数がそのままポイントに反映されポイントによってカードのランキングが一般からゴールドやプラチナと変わっていく面白いシステムだ。食べたグラムがポイントとしてどんどん貯まっていきカードのランクが変わりそこから様々な特典が得られるとなると通いたくなるのは必須である。食べたグラム数が分かると、次はもう少しグラム増やしてみようかなとチャレンジしたくなる、その気持ちを増長させる戦略が個人的にはとても心をくすぐられた。
3:急激な店舗数拡大と大規模閉店
2013年に第1号店をオープンした翌年には新たに30店舗、その後も毎年新規店舗をオープンさせ2019年末には500店舗を超える急速な成長を遂げる。しかし、お客様のニーズをもっと理解しないといけない時期に出店を増やすことを優先してしまった点は経営の判断の中で大きな失敗だったと振り返る。店舗数を追いかける経営になると店舗数を増やす事が使命のようになり、1店舗1店舗のお客様の満足度やリピートしていただくことよりも店舗拡大に重点を置いてしまう、そうすると物件の選定も甘くなり適正価格の家賃ではなく少し高い家賃の物件も無理して出店しまう、その時だけが良ければ良いという考えになってまい遂に2019年の春頃に会社の経営、各店の売上高、最終利益などに変化が現れた。そこで2019年の年度末にあまりにも増えすぎた店舗を閉店することを会社の取締役会で決議する。500店舗の中から自社競合している44店舗の閉店を決まるが閉店作業の真っ只中であった2020年の3月にコロナが発生、時短営業や営業が出来ないなどの事態となってしまった。これまで会社として蓄えるべき得ていた利益を出店の方に注ぎ込んでいたため、営業が出来ないと利益が生まれず借入の返済や、従業員の雇用存続などあっという間に資金繰りに滞りが出てしまい新たに114店舗の閉店を余儀なくされてしまった。繁華街を中心に家賃の高い店舗を優先的に閉店していったそうだが「今思えばちょっと頑張って残しておけばよかった」と複雑な心境を語ってくれたが、同時に今後はそういった手放したエリアや街への出店への意欲も覗かせた。
急速に増やし続けた店舗数、そしてコロナ禍での回避できなかった閉店の背景、好調だった事業の経営判断の失敗や苦渋の決断の裏側を全て曝け出してくれた一瀬しが次に見据える未来とは。後半で聞かせてもらおうと思う。