GUEST INFORMATION
安藤 成子
株式会社Ts&8取締役
株式会社Ts&8 取締役
http://www.tsand8.com/
https://so-mensososo.com/
そうめん専門店「そうめん そそそ」、和食と和菓子のお店「和菓子 楚々」の運営、パーティー装飾やケータリング、イベントプランニング事業を行う「ALOPARTY」、長崎県の五島列島にはセントラルキッチン兼加工物流拠点「素」を置くなど幅広い事業を展開する株式会社Ts&8の取締役、 安藤 成子氏をお迎えし起業の経緯やキャッチーな店舗名の謎、今後の展望や日本の食文化、まだ知られていない食材などを聞かせてもらった。
1:現代風の団子
飲食業を中心に幅広い事業を展開する安藤氏だが、2014年に代官山に1店舗目の和菓子と和食のお店「楚々」をオープンしその後、現在の多岐にわたる事業へと派生していったそうだ。飲食業態に全て「そ」が入っている理由を聞くと和菓子のお店は女性の清らかで控えめな美しさを感じさせるさまを表す際にも使い奥ゆかしさを表す言葉のひとつである「楚々」から由来しているそうで、その「楚々」のそうめん屋なので「そうめん そそそ」と名付け、各店舗の素(もと)を作ったり素材のもとと言う意味でセントラルキッチンを「素(そ)」と付けたそうだ。音の響きが可愛らしくキャッチーにしているのかと思いきや全てにストーリーがあり、それも全ての業態に共通していると聞き、なるほどそう言うことかと妙に納得してしまった。現在は日比谷と渋谷にテイクアウトが中心のお団子をメインに販売している「和菓子 楚々」と、代官山にストリートカジュアルをイメージした茶屋の「Dango Chaya So-so(だんご茶屋 楚々)」の2つのスタイルで展開している。だんご茶屋の店舗は少しひねりのあるベンチや黒い畳など茶屋を現代的に解釈した内装になっているので足を運んで欲しいのは勿論だが、お店のメインビジュアルがとてもインパクトがありかっこいいので併せて検索して欲しい。それもTs&8社のコンセプトでもある日本の昔ながらの食材を継承していきたい、現代の人たちにも知ってもらいこの先何十年、何百年とまた続いていけるようにしたいという思いから昔からある食材を現代風にしたらどうなるだろう、若い人たちが好むにはどうすればいいだろうと試行錯誤をくり返しているそうだ。お土産や差し入れで好きな時に食べられるようにと個包装にしたり、種類もオーソドックスなみたらしやあんこの他、変わり種でクッキークリームや期間限定のフレーバーを用意するなど飽きさせない工夫もしている。
2:そうめんのポテンシャル
そうめん専門店「そそそ」について聞くと「元々すごいそうめんが好きだったわけではなく、夏休みにそうめんが出てくると今日もそうめんかって気持ちになっていたんです」と非常に共感できるエピソードを話してくれた。決して嫌いなわけではなくどちらかと言うと好きであり、夏になると食べたくなるがちょっと続くとまたか…という気持ちにさせる不思議な食べ物であり、アレンジするよりもシンプルに麺つゆで食べるのが1番で何故かそうめんに手間をかける気持ちにならない何ともちょっと可哀想な存在である。そのそうめんの専門店を始めたきっかけが香川県の小豆島の「島の光」というそうめんに出会い初めて食べた時にそうめんの概念が覆される程の感動を受け、楚々が和食の形態をやっている際に締めとして出している内にアレンジのアイデアが止まらなくなり構想が100種類以上を超えた時に、専門店を作ろうと決意をしたそうだ。現在は2店舗あり、日比谷店は「そうめんそそそ~その先へ~」と言うこれまた変わった店名とは裏腹に銀座が近い土地柄に合わせ高級食材を使った家庭では味わえないようなメニューや、イタリアンの要素を取り入れたパスタに近いものやアジアンテイストの他、勿論オーソドックスなつけそうめん、ぶっかけそうめんなどの和風のものも用意している。渋谷店は「そうめんそそそ研究室」と言う店名通りにラボ風の内装になっており、ビーカーやフラスコが飾られ、そうめんの量や味付け、トッピングの具材などをお客様自身が組み合わせて自分だけの一杯を作って楽しめる店舗になっている。両店ともにコンセプトが違うが1番人気は明太クリームそうめんとのこと。麺が細くよくスープと絡むようにコッテリとした粘度高めなクリームスープに明太子のつぶつぶがアクセントとなり人気だそうだが、話を聞いているだけで食べたくなる。安藤氏が魅了されそそそで提供されている小豆島の「島の光」は、400年続く歴史のあるそうめんで、国内で唯一、ごま油を使用しコシがありツルとした舌触りと喉越しと、コシが強いので伸びづらいのが特徴で温かいスープに入れても30分程度ではコシが生きているそうだ。麺だけではなく出汁もオリジナルで店舗ごとに毎日仕込むなど拘っている。因みに驚くことに手延べそうめんは国家資格が必要だそうだ。
3:食のリノベーション
食に関わる事業をやられているのは昔から食への思いやこだわりが強かったのかを尋ねると、安藤氏の祖母の実家が横浜の中華街の真ん中にある昔ながらのお団子やお稲荷さん、海苔巻きなどが並ぶ和菓子屋さんだったそうだが、安藤氏が起業する1~2年ほど前にお団子などを作っていた職人が体調を崩し、後継者もいなく閉じてしまったのがきっかけで和菓子をやろうと決意したそうだ。そこから若い人や外国の人に食べてもらうにはどうしたら良いだろうとパッケージのデザインにもこだわり今に至ると話してくれた。そうめんも同じく国家資格が必要とハードルの高さ然り、夜中の2時頃からの寒空の下での仕込みに始まり、夏は良いが冬にはなかなか売れないなど、それを見ていた職人の子供たちは過酷でお金にならない、食べる人もいないなら東京へ出て別の仕事をしようとさらに後継者が減っていく現状を知り「食が途絶えてしまうことに悲しくなり絶やしたくないと思いどうにかしたいと言うところから事業を始めた」と自身の祖母の実家が和菓子屋だったというルーツも相まっているとは言えその行動力にはもっと強い信念のようなものを感じた。
全てにストーリーがある安藤氏の話は人を惹きつけ、そして引き込まれる不思議な魅力がある。後編では起業のきっかけや今後の展望などを掘り下げてみたいと思う。