GUEST INFORMATION
櫻庭 康人
株式会社天地人 代表取締役
株式会社天地人
https://tenchijin.co.jp/
<ゲストプロフィール>
多様な人的ネットワークと、マインドスコープ株式会社、株式会社センスプラウト等の設立・事業拡大を通じて身につけた豊富な新規事業開発の経験を活かし、株式会社天地人の代表取締役を務める。農業IoTセンサーの開発経験もあり、ハードウェアからソフトウェアまでその知識は幅広く、天地人サービスをビジネス視点でデザインする。
1:人のために
前編では創業6年目の天地人社が手掛ける宇宙水道局という漏水リスクを評価するサービス、風力発電の適地分析ツール、水田のメタンガス排出量の測定をするアルゴリズム開発、宇宙ビッグデータ米の話を伺ったがその収益方法は衛星データを使って分析した結果を、Webアプリケーションでサービスをサブスクで提供し年々3倍のペースで成長している。データを身近なものとして使って欲しいという思いと、どういう風に触れたり見れたりすると扱いやすいか、分かり易いかを重点に開発してきたからからWebでサービスを提供しているそうだが惜しみなくデータを開示しているとはかなり太っ腹である。イベントにも積極的に参加しているそうで目を輝かせた子供達もたくさん来場している。櫻庭氏も幼少期から宇宙にあこかがれを抱いていたかを聞くとそうではなかく人並み程度の関心しかなかったという通りに美容師やインテリア会社の店長を経てECサイトのスタートアップ会社の道へと進む。全てのことをやらなくてはいけないスタートアップ会社は正直、大変だったのでは思うが人のために汗をかくことが好きだったことからその後も大企業の新規事業の立ち上げなどにも携わり、社会課題を解決したい、人の役に立ちたいという思いはずっと持ち続けていた2016年に宇宙との運命的な出会いを果たす。少々ドラマティックに比喩してしまったが内閣府主催の宇宙ビジネスコンテストが始まるから出てみたらと声をかけてもらい当時は一般的な知識程度で興味もそこまで高くなかったが、JAXAで面白いエンジニアがいるからと紹介されたのが現在、天地人社のCSTOである百束氏であった。衛星を2機作りどういう部品で作られロケットにどうやって搭載され宇宙へ行くか、どうやってデータが飛んでくるかなど全てを知っている百束氏とビジネスのプロである櫻庭氏が意気投合しこれやったら面白いんじゃないと盛り上がり一緒に会社を立ち上げたそうだが、そのコンセプトは今も変わっていないそうだ。
2:8度の気温差
天地人という社名がとてもユニークでその由来を尋ねると「“天”からの情報を“地”上の情報と合わせ“人”類の生活を豊かにする」という想いに乗せ、天=衛星データ、地=地上の8~9000種類ほどあるオープンデータ、人=人のノウハウや人のデータ、企業のデータの3つの要素を掛け合わせることで社会課題を解決しようと名付けたそうだ。もはや衛星データに関しては測定できないものはないのではと思ってしまうが「動画はないんですよ」と教えてくれた。基本的には地球を回りながら撮っているため、全て1枚1枚の写真で収めている。この現代で動画はないのかと思ってしまうがものすごいスピードで飛んでいるのだから動画は無茶である。そこで櫻庭氏に面白い話を聞いた。温度と地表面温度の違いを聞かれて応えられるだろうか。では、天気予報などで気温を目にしそれはどこを指しているのかどの範囲なのかどこで測っているのかを気にしたことがある人はどれほどいるだろうか。私も合っているか合っていないか疑いもせずそれ位の気温なんだろうなと当たり前に思っていた。実際にはサーモグラフのようなもので地球のデータを取り私たちに情報として降りてくるが250m範囲で細かくデータがあったりするそうだ。そこまで緻密な温度を言われても困惑してしまうから地域ごとに分かれているのだが例えば同じ東京でも、新宿と豊洲では8度ほどの違いが生じているそうだが天気予報を見て、今日は豊洲から新宿に行くからこの服装で行こう、でも気温差が8度ある…どうしようとなるのは当たり前であり、だったら全体を写しているサーモグラフィで大まかな気温を教えてくれた方が良い気もする。気温1つにおいてもこんなに宇宙データは面白い話を提供してくれるのだからイベントに来た子供達は目を輝かせて前のめりで話を聞くのも頷ける。
3:今後の展望
東洋経済が選ぶ「すごいベンチャー100」の2024年の最新版でも選出をされている天地人社が描く未来とはを聞くと、宇宙水道局を日本全国の自治体に提供したいと社を挙げて頑張っていると応えてくれた。データを使って効率化していただきたいという思いもあるがこの課題は日本だけではなくアジアやヨーロッパ、南米など世界中でも同じような課題がある反面、日本のスタートアップは海外に出るとうまくいかないケースが多いそうだ。しかし衛星データは国は関係なく地球規模で同じセンサーでデータを取っているからこそこの技術をグローバルに提供したいと考えていると続けてくれた。宇宙技術にも理解を示す自治体や企業も増えている背景には、新しい技術を導入し効率を上げていくことの方が課題として大きくなりどうにかしないといけないという思いが強いそうだ。それほどまでに人員不足の問題は深刻であるということである。その問題解決に向かっている天地人社には宇宙関連出身の人はほとんどいないというのにも驚いた。宇宙技術はまだわからないことが多いが学べる機会が多く共に成長できる環境も魅力的なのだと思う。
宇宙技術と言っても衛星データーを使い地球上の人々の生活を豊かにする事業内容を聞き宇宙が少し身近に感じることができた。隣の芝は青く見えるではないが宇宙からみた地球をデータ化することで新たな気づきや発見、問題点などを地球人へ落とし込み手助けをしてくれる天地人社のサービスや技術には期待と希望が溢れている。データが全てではないといった櫻庭氏の印象的な言葉通りに昨今、地球が悲鳴をあげ災害や環境問題が深刻化し予測不能なことが多々起きているが、「地球は青かった」とユーリ・ガガーリン氏が言ったその言葉通りに宇宙から見える地球はそのままでいて欲しいと強く願うばかりである