GUEST INFORMATION

櫻庭 康人

株式会社天地人 代表取締役

株式会社天地人
https://tenchijin.co.jp/

<ゲストプロフィール>
多様な人的ネットワークと、マインドスコープ株式会社、株式会社センスプラウト等の設立・事業拡大を通じて身につけた豊富な新規事業開発の経験を活かし、株式会社天地人の代表取締役を務める。農業IoTセンサーの開発経験もあり、ハードウェアからソフトウェアまでその知識は幅広く、天地人サービスをビジネス視点でデザインする。

JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)発のスタートアップ企業である株式会社天地人の代表取締役CEOの櫻庭康人氏をお迎えし、意外と私たちも日常使いをし身近にある宇宙技術と地球のデータ活用などを交え人に寄り添った事業内容を紹介してもらった。

1:宇宙技術と宇宙水道局

「宇宙技術」と聞いてもピンとこない人も多いのではないだろうか。私もその一人であり宇宙=謎かつ未知で壮大な話をこれからしてもらうのではないかと少々身構えていたが天気予報や道順を調べるためのGPSなどほぼ毎日のように活用をしているのが衛生データであり宇宙技術だと教えてくれ、とても身近なものだと知った。衛生は地球の外で飛びながら常に地球をデータで取っておりそのデータは11種類以上あると言われているが活用されているのはその中でも僅かだそうだ。その宇宙の技術で取れたデータを株式会社天地人は地球で活かし地球のポテンシャルをデータで分析し評価することを軸に地球や人類の課題を解決できる様なソリューションの開発提供を行ない、その技術を生活の一部にまで落とし込み当たり前のように使って欲しいと考えている。天地人社は日本で初めてJAXAから資金調達を実施したベンチャー企業であるが、同様の企業は現在70社以上あり大半はロケットに関する事業をされている。単にロケットと言っても火星や月に行くための人を乗せるだけではなく、実は荷物を運ぶためにありそこに衛生を搭載し、地球や天候を観測している衛星もあればインターネットを繋げていたり、テレビを放送していたりと様々な役割を果たしている衛星が現在は約1万3000基以上も地球の外に飛んでいると教えてくれた。では、具体的に天地人社はどういったことを行っているのか。まずは「宇宙水道局」というサービスについて紹介してもらった。衛星データやオープンデータ、水道管理情報や漏水履歴等の様々な情報をAI技術を駆使し、漏水リスクの診断と、点検や修理等の記録管理を支援するサービスで、自治体が管理するエリアを100m四方の小さな区画に分け、そのエリアで漏水が起こるリスクを5段階評価で見える化し、漏水する可能性が高いエリアを絞り込むことで優先的に調査すべき場所を簡単に見つけることができる。これによってこれまで職員の勘や経験に依存していた漏水調査を、データに基づいてより効果的に作業をできるようになったそうだ。水道管は地下に埋設されていることから目で直接見ることが難しく聴診器のようなヘッドホンを装着し地面にセンサーを置いて水の音が聞こえるか漏水していないかを判断し莫大な時間と労力を費やしている反面、この辺りが漏れているだろうと「勘」で検査をしていることにも驚いた。温暖化や地震の影響により世界中で水漏れの事故が起き深刻な問題となっている現代では自治体の協力のもとこの衛星データを使って効率的に漏水検査を行えるとはかなり画期的なサービスだと思った。現在は20以上の自治体にサービスを提供しているそうだが今後はもっと増えていくのではないだろうか。

2:ニーズありきの宇宙技術

水に続いて次は風の「風力発電の適地分析サービス」を紹介してもらった。現在、風力発電を設置する場所がどんどんなくなってきている中で各社が場所の取り合いをし、この辺に設置するとどのくらいの風力が見込めるかを計算し設置をするのだが実はそのデータがズレていることが多く思ったより風が吹かず発電量が取れなかったなどのことが生じているそうだ。自然を相手にしている故、仕方がないことではあるが莫大な資金を費やした企業としては、たまったもんじゃないだろう。そこで衛星データを使い精度を上げ、さらに景観が悪くなるといった問題や鳥などの生物に対する影響のデータも分析にかけより良い場所の提案をし設置場所を選べるサービスを提供している。風力の他にどういった生物がそのくらい生息し、鳥がどういうふうに飛んでいるかなど生物も大事な要素で、そういった生物に関する環境省が保有しているデータと天地人社が持つデータを合わせることで条件を入れれば最適な場所を弾き出すことができクライアントの企業が候補に挙げていた場所とは違う所も提案が可能となっている。引っ越しをする時に不動産屋さんから候補以外の土地を提案された時のような新たな発見と驚きは期待でワクワクする、規模は違えどそう言った感覚に近いのではと思った。他にも水田のメタンガスの排出量を測定する方法を現在は特許出願中だそうだ。測定器を置いて農家が毎回記録をしなくてはいけなく農業をやりながらデータを取るのは容易ではない。そこで衛星データで計算できるような方法を出せたら喜ばれるのではと着手したそうだ。水道局は自治体、風力発電は企業、メタンガスの排出量は農家とサービスによってクライアントも変わるが「僕らはニーズから考えて入っている」と技術を使ってサービスを考えることはせずに人の助けになるために宇宙技術を応用し提供しているから一貫性のないサービスができていると笑っていたが、人に寄り添い労力と時間を格段に減らす技術を提供していることとても素晴らしいと思う。

3:データが全てではない

驚くことに未だ創業6年目の天地人社は数々の技術を提供しニーズに応えられるデータを揃えているが、その背景には絶え間ない努力の賜物だと思うが、どの様にして対応してきたのか聞くと、衛星で何ができるのか、これはできないのかなど沢山の問い合わせを1000本ノックと表現しトライアンドエラーを繰り返しながら試行錯誤をし生き残ったのが現在のサービスだと応えてくれた。衛星データは地上センサーの様にどこかに置いてこれから計測しますではなく、常に宇宙に飛んでデータを観測している為、過去5年分のデータも計算が可能で人口が減り最近は10人でやる事を8人でどうやってやるかの8掛け社会と言われている程に人員不足の現代では非常に有益となる。衛星データを管理している企業と情報交換をしデータを使わせてもらうなどその繋がりは日本だけではなく世界中の企業にまで及び情報量やデータも莫大でありその活用方法も未知数である。現在は「宇宙ビッグデータ米」というお米を手掛けており風力発電と同じく日本全国から衛星データで場所の降水量、温度などを分析し理想の環境でお米を作っている。温暖化が進み地表面温度は年々1度ほど上がっているが衛星データではもっと上がっていることもあり、そうなると農家さんの感覚や長年の経験では対応できないことも生じる。そこで栽培カレンダーから最適な場所で作ったらどうなるかをデータで分析した結果、山形県の鶴岡市が選ばれた。地表面温度、日射量、降水量などを分析し4年間鶴岡市で作っているが1番理想に近い90何%という場所が鶴岡市だったそうだ。データとはいえ100%正解ではなく常に変化する環境に自分達がどう変わり順応していくか、どうアプローチをしていくかをデータを見ながら考えていくところが「僕らのビジネスのポイント」だと前編を締めくくってくれた。


宇宙は日本橋へという働きの元、JAXA同様に日本橋に会社を構える天地人社は世界中からデータを集め日々、人々のためにサービスを提供している。櫻庭しが宇宙にいつから興味を持ち今の仕事に着いたのか後編ではその過去を深掘りしていきたいと思う。