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山口 勝幸

チャットワーク株式会社

https://corp.chatwork.com/ja/

PF:SI・制作会社勤務を経て、ITサービス提供事業会社でサービスと組織マネージメントに従事 2008年にChatworkに入社後、常務取締役に就任 2016年にCMO、2019年3月に取締役副社長COOに就きビジネス部門を統括しマザーズ上場へと導く 2022年4月副社長執行役員CNO(Chief Networking Officer)に就任 社内外における人的ネットワーク強化を担う 社長補佐として経営判断および事業推進を支援

2013年創業のチャットワーク株式会社は、電話やメール、FAXに代わって「仕事で使えるチャット」を提供するサービスと、中小企業のバックオフィス業務を全て引き受けDX化を進めるビジネスプロセスをアウトソージングする「チャットワークアシスタントBPaaS(ビーパース)」を展開している。現在43万社、660万人のユーザーに利用されるほどの大手サービスにまで成長したその立ち上げから現在に至るまでの経緯と戦略などを詳しく聞いた。

1:チャットワーク社の2つの事業

中小企業のお客様をメインにサービスを展開するチャットワーク社は、主に仕事で使えるチャットの提供サービスと、バックオフィス業務を引き受けるチャットワークアシスタントBPaaS(ビーパース)を展開している。どの業界でも必ずと言っていいほどに挙がる深刻な人手不足の問題が起こっている中で本業以外の経理や給与計算、営業事務などに手が回らない企業も多いのではないだろうか。そこに着目し、チャットワーク社がバックオフィス業務を巻き取りながらそれをだんだんと機械化していくいわゆるDX化を提供するサービスがBPaaSである。もう1つのチャットサービスは、ビジネス向けのチャットは多くの企業、会社が利用しているイメージがあるが意外にも導入率は2割程度と、個人用のSNSやチャットを利用している人はいるが会社、仕事用として単独で利用している人はまだまだ少ない。その中でチャットワークス社のユーザーは43万社、660万人が利用している。13年間の歴史と努力の賜物だとは思うが、そもそもの立ち上げの経緯を聞くと兄の山本敏行氏と弟の山本正喜氏の山本兄弟が大学在籍中に学生起業した会社だそうだ。アメリカ留学中にテレビCMで多く流れてくるインターネットに興味を持ちホームページが流行り始めた時代だったこともあり検索エンジンにヒットしやすくなるSEOサービスから始め、その後業務用アプリの日本代理店として販売する事業を展開する。山本兄弟がアパートの一室からスタートし長い年月をかけて仲間を集め会社として形にしていったが、その創業期の後半から参加した山口氏は、社会人経験もない兄弟が始めたベンチャーであり、まだ手探りで色々なことにチャレンジができて面白かったと振り返る。

2:何もない会社

日本の起業の99.7%が中小企業と言われているが、このマジョリティーの企業や人たちの生産性を上げたら日本全体の生産性が上がるのではと考え、経営資源が少ない中でもコストパフォーマンスの良い安い投資でパフォーマンスが上がるからITを導入していきましょうとIT自体を広めることに注力していた。チャットワーク社も中小企業に向けてサービスを提供する目的で起業したこともあり、自分たちが実践し発信していこうと電話も紙もないメールも使わない「何もない会社」を実践していた。どうやって仕事をしていたのかと思わず聞いてしまったが「チャットでできるんですよ」とまんまと戦略に乗ってしまった。まだリモートが浸透していない当時からリモートワークを行い、普通の会社にありそうな物は何もないけどこんなに効率的に働けて、業績も伸ばしていけるんですよと自分たちが自らお手本となり広めていた。断捨離のように手放す気持ちよさも然り、今までこんなにも無駄が多く冗長なコミュニケーションやプロセスが多かったのか、チャットを使うことで生産性が上がるんだと山口氏本人もとても快適だったと話す。例えば電話は相手の時間を奪いタイミングが合わなければまた連絡をしなくてはいけない、待つ時間も含め多くの時間を使うことになる。しかし、やはり人が人に向けて行う商売にはコミュニケーションは必要で人との繋がりは大事だが、全て集まってやる必要はなく業務のやり取りはチャットでスピーディーに行い「ここぞという時のコミュニケーションのために時間は取っておきたい、そういった使い分けが大事なんですよね」と、ITが全てではなく人との繋がりや温かみも大切している山口氏の言葉が印象的であった。

3:オンラインサービスと相反するオフラインの口コミ

当時はチャットとはどういうサービスなのかピンときていない人も多く、ゲームをする人にはチャット機能は知られていたが娯楽のものというイメージがありそれを仕事に使う発想に結びつけ定着させユーザーを獲得したその戦略を聞いてみると、地道な努力があった。チャットワーク社がサービスのリリースをした時もすでにチャットを利用したいた人たちはいたそうだが、IT系のアーリーアダプター、イノベーターのような先進的な人たちが面白がって使ってくれたことも大きく、チャット機能は1人では使えないのでこれ便利だよと誘ってくれてお客さんがお客さんを呼ぶプロダクトの特性もありジワジワと広がっていった。そして中小企業は大企業と違い自社で完結する会社がなくさまざまな取引先などと連携しながら成していくことが多く誘い合うことでさらに広がりを見せる。また同業者向けに講演をするような業界を引っ張っていく人たちが皆さんもこれ使った方が良いですよとチャット画面を見せながら講演をしてくれたケースもあったそうだ。良いものを周りに勧めたくなる人間の心理を非常についていると思った。兄弟で始めた何も持っていないスタートアップ会社が応援してもらえる力は自慢できる部分であると話していたがそれを築き上げたのはやはり創業者の山本兄弟である。大阪からどうやって全国に広めていくねんと一番最初に行ったのがIT飲み会を月1回開催すること、その後何年も続け泥臭く情熱的に人間臭くぶつかりにいき他業種のコミュニティにオフラインのリアルな場でプロモーションを行い広めていった。

山口氏が1番嬉しかったこととして、ユーザーからチャットワークさんは人の血が通ったサービスに思えるんだよねと言葉をかけてくれた時と話してくれた。山本兄弟イズムを継承し広めた努力の結晶だと思うがその架け橋となり広めていった先の現在と未来、展望などを後半で詳しく聞いてみたいと思う。