GUEST INFORMATION

竹林 史貴

株式会社 RUFLOG 代表取締役社長

https://rufflog.jp/

関西学院大学卒業後、2010年にサイバーエージェントに新卒入社。 広告事業部門にて入社2年目にして代理店部門最優秀ベストプレイヤー賞を受賞。 その後、株式会社AMoAdの営業マネージャーと代表取締役、 AMoAdの子会社であるAppelevenの代表取締役を経て、 2016年1月に独立。 2016年4月に株式会社LOB(エルオービー)を創立。 2018年 楽天グループにバイアウト。 2021年11月、株式会社RUFFLOGを創立。

1:ゴルフ事業を始めた経緯

ゴルフブランド事業をスタートさせた竹林氏だが、事業を始める前は綺麗に退こうかと考えたこともあったそうだ。周りに会社を売却した後、予想外の事業を始めたり、前社を越える大規模な会社や事業を始めたりした人を見てきて自分もそういった大きな事を始めないといけないのではないかと自らプレッシャーを課して悩んでいた時期があった。相談相手もいなく塞ぎこんでいた時に経営カウンセリングを受け誰に何を思われても自分がやりたいことをやるのが正しいと踏ん切りがついた。ゴルフに関わる仕事がしたい、好きだから長くやれる、新しいことをやっていくことが自分にとって大事な価値観だと気づき覚悟を決めた。始めた当初はコロナ禍が終息しきっていない頃だったがゴルフ練習場に若い世代を多く見かけるようになり「この人たちはどこで服買うんだろう」という素朴な疑問から50~60代のメインプレイヤーと同じ服を着るのはイメージが湧かない、ということは若い世代向けのマーケットポジションが空いているのではと思いその世代に向けたブランドを始めようと思っていた。しかし、自社ブランドを始めるよりかは同じ世代をターゲットにしているブランドを集たお店にすれば特定の好きなブランドがなくてもあのお店に行けば好きなものが見つけられると思ってくれるお店にしようと思いセレクトショップとして店舗オープンに着手する。

2:別業種参入の苦労とマーケティング戦略

ずっと広告業界に身を置き活躍してきたがアパレル業界は未経験。初めての事に壁を感じるのはあるあるではあるが広告業界とアパレル業界との大きな違いは「在庫ですね。広告は売れ残っても空き枠になるだけで赤字にはならない。でもアパレルは売れないで在庫が増えれば、赤字になる。アパレルのPL(損益計算書)の作り方、未だに分かってないから苦労しています笑」と、冗談まじりに話してくれたが全くの別業界に参入したのだから当たり前ではあるがアパレルは仕入れも生産も前入金の場合が多く兎に角、全てにおいて事前支払いが必須となる。つまりは売り上げを作る前にどんどんお金が出ていくシステムなのだ。現在も全てを取り戻せてはいないそうだがとても楽しそうな表情で話す竹林氏を見るとその苦労さえも楽しんでいるように感じた。では、店舗ではなくオンラインだけの選択肢は無かったのかを尋ねると有名ブランドから独立したデザイナーでもなく、アパレル業界でのバックグランドがあるなどの背景がない素人の自分が始めたブランドがオンラインだけで戦えるイメージが湧かなかったと話す。そしてリアルに届いた時のギャップや、動きが重要視されるゴルフにとって実際に手に取って見てもらい買って欲しいという思いもあった。そして代官山の中心地に店舗を構えることで国内ブランドは勿論のこと、海外ブランドからも日本人に直接手に取ってもらえるならと仕入れもうまくいった利点もあったそうだ。マーケティング面ではローンチして1年半でInstagramのフォロワー数が2万4000人と順調な様に思うが日本のゴルフ人口が約600万人のうち2万4000人だからまだまだですとストイックさも垣間見れた。

3:ゴルフを通じて広がるコミュニティとメンバーへの共有手段

ゴルフの面白さについて人脈が広がる事も挙げてくれた。自身がお酒が苦手という事もあり所謂、飲みに行きましょうの代わりに口癖の様にゴルフ行きましょう、ラウンドしましょうと誘うそうだ。ゴルフ場までは車で行くことが多く迎えに行けば往路時間に車内でじっくり話すことができ、更にはラウンド時間、その後の食事や時にはお風呂の時間も共有ができる。複数人と一緒に楽しい時間を共有することでフラットに会話が出来、他のスポーツと比べ勝ち負けのヒリヒリした雰囲気はなく、年齢や地位など関係なく上手ければすごいねと盛り上がり関係性が深まりさらにビジネスにも繋がる事もある、なんとも特殊なコミュニティと言える。スポーツブランドはコミュニティマーケティングがとても肝だと話す様に、経営面でも同じく意識し大事にしている。入社の際にメンバーには抽象的な未来も示しテンションが上がるかワクワクするかを擦り合わせ、そこから数字目標を落とし込みワクワクする未来を描き伝えることを繰り返し行なっているが、店舗やアルバイトのメンバー、出社していないスタッフなど全員に直接伝えることは簡単ではない。伝える努力としつこく伝えることをに重点を置いている竹林氏はそのツールとして非公開のYouTubeチャンネルで10分程度の動画を撮り社内のSlackで共有しいつでも聴ける様にしている。決定事項だけをポンと提示すると社長が何を考えているのかわからないと気持ちの相違や同じ目線でいることが困難な場合もあるが、なぜこれを意思決定したのかその背景や順番を話し信念や気持ちなど細かく伝えることで同じ目線で同じ目標に向かって進むことができ共有し合える。なんて面白い取り組みなのだろうと思った。全員を集めて講義のように強制的に話をするのではなく、いつでも聴けるようにとメンバーの時間も大切にしている点も現代的で素晴らしい。

最後に今後のことについて聞くと「死ぬまで新しいことをやり続けて死ぬ。アパレル以外のこともどんどんやっていきたい」と答えてくれた。運や縁、チャンスは思いがけず訪れるが、その時に勇気を持って踏み込む、そのために気持ちを身軽にしておくそうだ。どんなに頑張っても運に勝てない時はあるとも言っていたがその時も、今は運に見放されてると受け入れ目の前のことを1つずつ着実にやる、そこを乗り越えたときにまた新たなことが見えてくるからそういう時こそ苦難をも笑って客観視して身を委ねるそうだ。

2週に渡り話を聞いたが、良い意味で欲がない人という印象を受けた。目標に向かって泥臭くがむしゃらに突っ走てきた経営者を多く見てきたが、竹林氏はその逆でじっとその時をくるのを待ち冷静に自分を客観視しチャンスが目の前に来たときに確実に運を掴みそこから色々と考える人ではないだろうか。そしてそういう人にこそ運は巡ってくるのかもしれないが、運を味方にし、運と人を惹きつけるとても魅了のある人であることも忘れてはいけない。次に会った時にまた新たなことを始めているのではないか、もうすでに次の何かを考えているのではないかと気になりラウンドを回りながら話を聞きたいなと、ついゴルフに誘ってしまったのは言うまでも無く、彼の戦術に見事にハマってしまったかもしれないがそれでも良いと思ってしまう不思議なパワーの持ち主である。取り急ぎRUFFLOGでゴルフウェアを買ってゴルフに行こうと思いながらつくづく彼に影響を受けてしまったと笑うしかない我々であった。